- ちゃんとピアノの練習をしなさい!
- どうして上手く弾けないの!?
- 練習しないならもうピアノやめなさい!
お子さんがピアノを習っている方、こんな風に怒鳴ってしまったことありませんか?何度も言うことを聞いてくれないと、ついイライラしてしまいますよね。
仕事や家事でもう限界!それなのに大声で怒鳴るってすごく疲れることです。
「できることならピアノで親子喧嘩なんてしたくない…」と思うのではないでしょうか。
そこで今回は、怒ってしまう理由や怒りを制御する方法を詳しく解説していきます。
これさえ読めばもう大丈夫。冷静に、穏やかに、お子さんと向き合えるようになりますよ。ピアノで始まる親子喧嘩は今日で卒業しましょう!
- 怒鳴ることは子どもに効果があるのか
- なぜ怒ってしまうのか
- 怒りをコントロールする方法
- ピアノが上手な子の親が意識していること
ピアノがトラウマになる原因
まず知ってほしいこと、それは
世の中にはピアノがトラウマになっている人がいるということです。
本当はピアノや音楽が好きなのに、過去の経験を引きずって、大人になってもピアノが弾けないという人もいます。
これはすごく悲しいことですね。
ピアノに対して抱えるトラウマ、その原因とは一体何なのでしょうか?
ピアノの先生が怖い
ピアノ教室の先生が厳しい・怖いという理由です。
かの有名な『のだめカンタービレ』でも、怖~い先生が出てきますよね。
”のだめ”は幼少期、ピアノの先生から受けた体罰がトラウマとなり、輝かしい才能を持っていながらピアニストとしてのスタートが遅れてしまったんですね。
これはフィクションの話ではなく、現実でもよくある話のようです。
「ピアノ教室の先生から、怒鳴り声を浴びせられた」
「間違えたら手を叩かれた」
こういった経験はピアノがトラウマになる大きな原因のひとつです。
親のスパルタすぎるピアノ練習
家庭でピアノを練習する場合、親が子どもの練習を見ることが多いですよね。
「親の指導がスパルタすぎて、いまでもピアノがトラウマ…」という人がいます。
こちらも先ほどと同じように、怒鳴り声や体罰が根本の原因です。
このように、ピアノにトラウマを抱える人は「怒り」の感情をぶつけられた経験があることがわかりますね。
怒鳴ることで子どものピアノは上達するのか?
結論から言うと、上達しません。
教えることが目的なのであれば怒鳴ることは逆効果です。
なぜなら怒鳴ることで子どもの脳の動きが止まってしまうからです。
脳には、理論的なことよりも「好き・嫌い」という感情的な情報の方が先に伝わります。
そのため子どもに限らず、人は「嫌い・イヤ」となったら、その後どんなに理論的なことを言っても頭に入りません。
怒鳴ることは子どもに「イヤだ」という感情系の情報を先に伝えてしまい、それ以上の情報を遮断してしまいます。
つまり「ピアノ練習しなさい!」「なんで教えた通りに弾けないの!?」と怒鳴ってしまうと子どもは「イヤだ」と感じ、それ以上の話を聞けなくなってしまうのです。
これではどんなに教えても上達しないですよね。
ではどうすれば怒りを抑え、効果的な指導をすることができるのでしょうか?
次の章では「怒り」という感情について解説していきます。
アドラー心理学から考える怒鳴ってしまう人の心理とは?
アドラー心理学とは
大ベストセラー『嫌われる勇気』で一躍話題となったアドラー心理学。
心理学者アルフレッド・アドラーが提唱した「人は目的のもと生きている、幸せになるには勇気を持つ」という思考から発展した心理学です。
自己決定性・認知論・目的論・全体論・対人関係論という5つの理論から成り立っていて、特に対人関係については特徴的な捉え方をしています。
全部解説したいところですが、あまりに内容が深すぎるので、詳しく知りたい方は下記のサイトをご覧ください。
〔参考〕アドラー心理学とは?【入門〜応用までわかりやすく解説】
なぜ人は怒るのか?
さて、アドラー心理学をもとに怒りを解説するには、まず目的論の説明をしなくてはなりません。
【目的論】人には必ず目的があり、その目的を達成する手段として感情や行動を使う
すごく難しいですよね。私も初めは理解するまで時間がかかりました。
わかりやすくするために、簡単な例を挙げます。
両親から虐待を受けて育ち、現在引きこもっている人がいるとします。
その人は「人と接するのが不安だから外に出られない」(原因論)のではなく、
「外に出たくないから不安や恐怖の感情を作り出している」(目的論)と考えるのです。
この場合「外に出たくない」というのが目的ということになりますね。
例を挙げてみても難しいですね…。とにかく、感情の前には必ず達成したい「目的」があると考えてみてください。
この目的論を当てはめた場合、「怒り」という感情の前にも目的があることになります。
その目的を達成するための手段として、わざと「怒り」の感情を使っているのです。
では、その目的とは一体何なのでしょうか?
「怒り」に潜む4つの目的
①自分の権利を守りたい(権利擁護)
例えば、「顔に泥を塗られた」「面子を潰された」と感じたときなどです。
自分の立場や面子を守りたい、要は自己保身という目的を達成するために、「怒り」の感情を使います。
②相手を支配したい(支配)
親子や上司と部下などの関係性に多く、相手を自分の思い通り動かしたいという目的です。
ピアノ練習の場面では、「子どもにピアノを練習させたい」という自分の考え通りに、子どもを従わせるために「怒り」の感情を使うというわけです。
③相手よりも優位に立ちたい(主導権争い)
親子間、夫婦間、社内など、さまざまな場面で、自分が主導権を握りたいという願望が目的となります。
リーダー的存在になり、自分に有利な状況を作り出したい、ということですね。
④正しいことを教えてやりたい(正義感の発揮)
相手は間違っているから正しいことを教えてあげなくちゃ、という自分の正義感を達成するために、「怒り」を使います。
ピアノ練習においては、正しい奏法で演奏していない、弾き方が間違っている、ということを教えるために、「怒り」の感情を使うということです。
怒りをコントロールする方法
ではどうすれば怒りをコントロールできるのでしょうか?
ここでは具体的に怒りをコントロールする方法をご紹介していきます。
自分の目的を言葉で伝える
さきほど解説したように、怒りは目的を達成するための道具でしかありません。
それを使うか使わないかは自分で決めているのです。
ということは、自分の目的を達成できれば良いのですから、わざわざ体力を使う「怒り」を利用しなくても良いのです。
子どもに怒鳴ってしまいそうになったとき、自分にはどんな目的があるのか、まずは考えてみましょう。
相手よりも自分に目を向けることで、冷静さを取り戻すことができます。
「ピアノを熱心に練習させたい」「正しい弾き方を身につけてほしい」
目的はさまざまですが、どれも言葉で十分に伝えられると思いませんか?
イライラして体力をすり減らすよりも、こっちの方が楽ですよね。
そうは言っても、「言葉で伝えてもダメだから怒ってしまう!」という人も多いですよね。それほど言葉で伝えるというのは難しく、根気を要することです。
しかし、ここで怒りを持ち出すのは、自分に都合よく目的を達成するためであって、決して子どものためではありません。
怒るのは自分のためです。子どものためを思うなら、言葉で伝えるだけで十分なのです。
- (私は)子どもにピアノを上手になって楽しんでもらいたい。だからピアノを練習してほしい。
- (私は)子どものピアノを上達させたい。だから正しい奏法で練習してほしい。
こんな風に、主語を「私」にすることを意識すれば、自分の目的を探しやすくなります。
目的がわかったら言葉を使って相手に伝えてみましょう。
素直な気持ちを伝え続ければ、子どもはあなたの言葉を聞いてくれるようになります。
- 「私は子どもに 何を・なぜ してほしいのか」達成したい目的を考える
- 目的が分かったら、言葉でうまく表現する
最初は難しくて混乱するかもしれませんが、まずはやってみてください。
一度でも成功すれば、怒りはすぐにコントロールできるようになります!
アンガーマネジメントを実践してみる
アンガーマネジメントってご存じですか?
これはアメリカ発祥の怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。
ここでは、今すぐ簡単にできるアンガーマネジメントを3つご紹介します。
①6秒ルールで怒りの衝動を抑える
怒りのピークは6秒と言われています。カッとなったら6秒間だけ我慢しましょう。
試しにいま6秒数えてみてください。
1…2…3…4…5…6…
意外と長いですよね。他の事に意識を向けることをおすすめします。
家の中にある物を見つめてみるとか、身体を動かせる状態だったら全身を使って深呼吸するのも良いですね。
私が読んだ本には、スクワットするのが効果的!と書いてありました。
カッとなった人が急にスクワットを始めたらめちゃくちゃ怖いですよね…。でも、「自分なにやってるんだろう」となって怒りは確実に収まります。
スクワット、おすすめです。
②怒りの段階を点数で表してみる
怒りを感じたときに、それがどのくらいの段階であるかと考えることで意識を逸らすことも有効です。
最大を10点として、「10点中この怒りは4点だ」というように考えてみましょう。
点数で表すことで自分の感情を客観的に見れるようになり、怒りが収まっていくでしょう。
③「もし〇〇だったら…」と考える
〇〇には、自分の好きな有名人やキャラクター、自分の尊敬する人などが入ります。
「もし、〇〇だったらこんなことで怒らないだろうな」と考えることで、こんなことに怒ってもしょうがない、心に余裕がある人なら怒らない、といったように前向きに考えられるようになります。
たしかに、「もしキティちゃんだったらこんなことで怒らないだろうな…。もっと可愛くやり過ごすだろうな」と考えているうちに、怒りが収まってきますね。
アンガーマネジメントは他にもさまざまな方法があります。
独学でも十分に実践できますが、日本アンガーマネジメント協会が開催するセミナーに参加することで、さらにわかりやすく確実に身につけることが出来ます。
セミナーは日本全国で行われていますので、興味を持った方は参加してみてはいかがでしょうか。
➤講座情報 | 【公式】日本アンガーマネジメント協会 (angermanagement.co.jp)
効果的な指導法!ピアノが上手な子の親が意識している3つのこと
じゃあ具体的にどんな指導をすれば良いの?というところを解説していきます。
一例として、ピアノが上手な子の親御さんが意識・実践していることを紹介します!
1.いち早く上達に気づく
子どものピアノを一番近くで聴けるのは親です。
だからこそ、苦手な部分や何度もつまづいている箇所が目につきやすいですよね。
こうした「苦手」に気づける親は、それを克服し上達していく過程も気づいてあげることができます。
子どもの上達に気づいたら、「できるようになったね」と声をかけてあげましょう。
子どもに自信がついてどんどんピアノが上達していくこと間違いなしです。
2.サポートに徹する
自分の問題に口うるさく言われると反発したくなるもの…。
「人に言われるとやりたくなくなる」。みなさんもこんな経験ありませんか?これはピアノの練習も同じで、口を出しすぎず後ろから見守る姿勢が大切です。
ピアノが上手な子の親御さんは、あくまでサポートに徹しています。
例えば経済的なサポート。ピアノを習い始めると、毎月の月謝の他に、練習する楽器の購入であったり、楽譜などの教材の購入であったり、とにかくお金がかかりますよね。
経済的負担が大きくても、子どものためにできる範囲でやりくりすることが大切です。
他にも、子どもの精神面を支えたり、練習する時間をつくったり…。ピアノの演奏そのものに関わらずともサポートできることはたくさんあります。
子どものピアノの上達を促したいのなら、サポートに徹するようにしましょう。
3.練習やレッスンには積極的に参加する
普段の家庭での練習や、ピアノ教室のレッスンにはできるだけ参加しましょう。
もちろん毎回じゃなくても構いません。家での練習も付きっきりじゃなくて大丈夫です。
子どもには、ひとりで集中してピアノの練習を継続することは難しいこと。とてもハードルが高いことが多いです。
ピアノ練習に一緒に取り組み、ときどき声をかける。こうするだけで「ピアノ練習はひとりで取り組むつらいもの」ではなくなります。
また、レッスンの内容を親が把握していることも重要です。
レッスンに参加すれば、先生の言うことを覚えていたり、子どもが分からなかった部分を後から教えることだってできます。
家に帰ってレッスンの内容が分からなくなったら、お母さん、お父さんに聞ける。
この状態はお子さんにとっても安心できるでしょう。
ピアノ練習に一緒に取り組むことで、親子の会話が増えるのも嬉しいですよね。
積極的にコミュニケーションをとっていきましょう!
まとめ
- 怒鳴ることは子どもに効果がない
- 怒るのは自分の目的を達成するため
- 自分の目的を考えることで怒りをコントロールできるようになる
- 怒りをコントロールするにはアンガーマネジメントも有効!
怒鳴ることは自分の体力をすり減らし、子どものためにもなりません。
この記事を読んだからといって、すぐに怒りをコントロールできるようになるのは難しいかもしれません。
しかし怒りについて知っているのと知らないのとでは、そこに大きな差があります。
ピアノのことでお子さんにイライラしたとき、つい怒鳴ってしまいそうになったときには、自分の目的を考えてみましょう。アンガーマネジメントを実践してみるのも手ですね。
ピアノがきっかけで親子喧嘩が絶えないなんて悲しい状況は今日で卒業しましょう。
ピアノは本来、音楽を楽しむべきものです。
お子さんが将来もずっとピアノを弾き続けるためにも、親としてできることを考えていくことが大切です。
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