- 「指が転んでいるって言われたけど、どういう状態?」
- 「指が転んできれいに弾けないときは、どうしたらいいの?」
ピアノのレッスンを受けている方は、先生に「指が転んでいるよ」と言われたことがある方はいませんか。
あるいは、ピアノを弾いていて「なんだか音がきれいにそろわないな」と思ったことがあるかもしれません。
そんなときは、「指が転んでいる」かも!指が転ぶとはどんな状態なのか、また指が転ばずになめらかに弾けるようになる方法を解説します。
- 「指が転ぶ」状態とは
- 指が転びやすいタイミング
- 指が転ばずに弾けるようになる方法
「指が転ぶ」という状態は意識しないとわかりにくいです。
この記事を読めば、自分の演奏のクセに気づき、さらに上達できます。ぜひ最後までご覧ください。
「指が転ぶ」ってどんな状態?
指が転ぶとは、部分的に音の速さが変わってしまうことです。
指がコントロールできずに、ダダッと走ってしまうようなイメージをもつとわかりやすいかと思います。
例えば、こちらの楽譜をご覧ください。まずはゆっくり弾いてみましょう。おそらく音の長さをそろえて弾けると思います。
では、どんどんスピードアップして、よく音を聞いてみてください。
・・・いかがですか?
「ドレミファソファミレド」とファやソの音が早くなったり、
「ドレミファソファミレド」と音階を降りるときに早くなったりしませんか?
これが、「指が転ぶ」です。
似たような状態を、「音が滑る」とも言います。
どちらにしても一見なめらかに弾いているようですが、実は音の粒がそろっていないためきれいに聞こえないのです。
指が転びやすいタイミング
では、どのようなタイミングで指が転びやすいのでしょうか。指が転びやすいと言われるタイミングを3つ紹介します。
これまで指が転ぶことにあまり気づかなかった方も、タイミングを知っておくと今後意識して練習できますね。
3・4・5指で弾くとき
鍵盤を第3指(中指)・第4指(薬指)・第5指(小指)で弾くとき、指が転びやすいです。
先ほどの楽譜だと、「ドレミファソファミレド」とミファソを弾くところですね。
これは、人差し指から小指までの4本が、腱という骨と筋肉をつなぐ組織で繋がっているからです。
なかでも、薬指はほかの指との腱間結合が強いと言われています。
指を1本だけ動かそうとしても、どうしてもほかの指も動いてしまいますよね。
そのため、薬指を使って弾こうとすると小指も動いてしまい、転んでしまうのです。
指くぐりのあと
指くぐりをして弾くときも、指が転びやすいです。
指くぐりとは、親指がほかの指の下へもぐって弾くこと。例えばこちらのフレーズ。おそらくソを弾くとき、ファを弾く中指の下を親指がくぐりますよね。
このとき、「レミファ♯ソラシド♯レ」と、ソとラを弾くときによく指が転びます。
なぜなら、指くぐりをすると手首の位置が変わりやすく、手首が上下に動くとメロディにばらつきが出やすいからです。
手首は平行移動させるように弾くことや、無理な指使いをしないことが重要になります。
黒鍵を弾くとき
黒鍵を弾くときも、その前後で指が転びやすいです。
指くぐりと同様に、黒鍵を弾くときも手首が上下に動きやすいため、音にばらつきが出やすいのです。
さらに、黒鍵の多いフレーズに苦手意識がある方も多いのではないでしょうか。
「苦手だなぁ」「間違えないようにしなきゃ」と思うほど、指の動きがこわばって転んでしまうこともあります。
まずはミスを減らす練習をするとともに、気持ちをリラックスさせることも大切です。
指が転ばず流れるように弾く練習方法
自分ではなめらかに弾いているつもりでも、実は指が転んでいた、ということはよくあります。レッスンで指摘されて、初めて気づくことも多いです。
「ひと通り弾けるけど、なんか音がきれいに聞こえないな」と思ったら、もしかすると部分的に指が転んでいるのかもしれません。そんなときに役立つ練習方法を5つ紹介します。
手のフォームを再確認する
まずは手のフォームを再確認しましょう。
メロディを弾くには、腕、手首、そして手の形がとっても大切です。
特に、指くぐりをするときや黒鍵を弾くとき。手首が上下に動いていませんか?
手首を平行移動するように弾くと、メロディのばらつきが減るので指が転ばずきれいに弾くことができますよ。
手のフォームをおさらいしましょう。
1. 肩の力を抜いて脱力する
まずは肩の力を抜きましょう。
両腕を下におろして、ぶらぶらぶら〜としましょう。そのまま肘から腕を上げて、鍵盤にふわっと手を置きます。これが脱力した状態です。
肩に力が入っていると肩が上がっていることが多いです。力が入ってるなと感じたときは、意識的に肩を下げてみましょう。
2. 鉄棒をふわっと握るイメージで鍵盤に手を置く
鍵盤に手を置いたら、鉄棒をふわっと握るように手を構えましょう。
このとき、「ふわっと」がポイント。「ぎゅっ」と力を入れちゃダメですよ。
手の甲が鍵盤と平行になるくらいに持ち上げるイメージです。
3. 鍵盤は指先と指の腹の真ん中で弾く
手をふわっと構えたら、指がピアノにあたる位置を確認しましょう。
鍵盤は、指先でもなく指の腹でもなく、その真ん中で弾くことがポイントです。
そうすると自然に手の甲が上にあがり、弾きやすくなります。
特に、親指や小指は爪の真横で弾きやすいので気をつけましょう。
爪の斜め45度(爪の角近く)で弾くことで、自然と手の甲を上げて弾くことができます。
ゆっくりなテンポで弾く
この練習は、指が転ぶときだけでなくピアノをきれいに弾く上で大切です。
ゆっくり弾くことで、「音の大きさのむら」「リズムの乱れ」「フォームの崩れ」などに気づけます。これらは早く弾いていると、意外と気づかないものです。
一音ずつ、鍵盤の真ん中をしっかり押さえるように弾きましょう。
一つひとつの音に体重をかけて、念を押すように弾きます。
すると、ある音だけが弱く、あるいは強く聞こえるかもしれません。
また、手首が上下に動いていることに気づくかも。そこが、指が転びやすいポイントです。
すべての音が同じ音量で弾けるようにしましょう。
そのあと、少しずつテンポを上げていきます。
つまらない練習かもしれませんが、確実にピアノは上達できますよ。
ペダルは踏まない
ゆっくり弾く練習のときは、ペダルは休憩しましょう。
ペダルを使うと、音がつながってきれいに聞こえてしまいます。
一音一音確認しながら弾くために、ペダルは踏まずに練習しましょう。
メトロノームを使うとより効果的
テンポをそろえて弾くためには、メトロノームも効果的。
テンポをそろえることで、音の強弱やリズムの乱れに気づきやすいです。
はじめは、ミスなく弾ける早さに設定して練習しましょう。そして、一メモリずつ(BPM=4ずつ)テンポをあげていくと、音の粒をそろえて弾けるようになります。
スタッカートやフォルテで弾く
指が転びやすいときは、スタッカートをつけて弾く練習や、強弱をつけて弾く練習も効果があります。
音の粒がそろっていなかったり、細かなタイミングがずれやすかったりするときは、指の動きをコントロールできていないことが原因です。
そこで、スタッカートやアクセントをつけて弾くと、いつも以上に指の動きに意識を向けられるため、指のコントロールができて転びにくくなります。
強弱をつけて弾く一例を紹介します。
1.裏拍にアクセントをつけて弾く2.アクセントをつける位置を一音ずつ移動させて弾くこの練習をすると、指でしっかり鍵盤をとらえられるようになります。指に意識を向けることで指のコントロールができるので、音が滑らず弾けるようになりますよ。
手のフォームとテンポを保つことを忘れずに、おこなってみてくださいね。
指くぐりは部分的に練習する
指くぐりで指が転びやすい場合は、部分的にゆっくり練習しましょう。
「ゆっくりなテンポで弾く」と同様に、部分的に練習することで自分のクセに気づき、音が滑らずに弾けるようになります。
練習の一例を紹介します。この音階を弾く場合、はじめのソの音を弾くときに親指をくぐらせますよね。
このとき、ソに親指を置いたまま、前の音と次の音を指番号通りにくり返し弾きます。
「ソ(1)は押さえたまま…ファ#(3)→ラ(2)→ファ#(3)→ラ(2)」
何度も繰りかえすことで、鍵盤の位置を確実に覚えることができ、ミスを減らせます。
また、指をくぐったときに手首が下がりやすいので、下がっている方は手首の高さを一定に保つことを意識してみてください。
2小節目も同様にやってみましょう。
ファ#の音を弾くときに中指が親指の上を通りますよね。これは指またぎとも言います。
なので、ソに親指をおいたまま、前の音と次の音をくり返し弾きます。
「ソ(1)は押さえたまま…ファ#(3)→ラ(2)→ファ#(3)→ラ(2)」
地味な練習ですが、指くぐりが不安な方はぜひやってみてくださいね。
音の粒をそろえるには基礎練習
指が転ばず音の粒をそろえてきれいに弾くようになるには、やはり基礎練習が大切です。
基礎練習をすることで指がすらすらと動かせるようになり、鍵盤の感覚も身につきます。
おすすめはハノン。すでに日頃から練習されている方もいると思いますので、いま一度練習のポイントをお伝えします。
まずは正しい姿勢・手のフォームが大切。先ほどお伝えした「手のフォームを再確認する」を確認しましょう。
そして、全ての音が同じ音量で弾けているか、リズムは正確か確認しながら弾きましょう。
ハノンはほとんどの音が16分音符ですが、自分の演奏をよく聞いてみると16分音符がわずかに長かったり短かったりしていることがあります。
これまでお伝えした「ゆっくりなテンポで弾く」「スタッカートやフォルテで弾く」を取り入れて、バリエーションをつくりながら練習してみてください。
ちなみに『全訳ハノンピアノ教本』の冒頭には、「1番の変奏の例」として22つのリズムパターンが載せられています。そちらもご参照ください。
ただし、基礎練習のしすぎは指を痛める原因にもなります。まずは1日5分で十分。無理をしない範囲でおこないましょう。
まとめ
今回は、「ピアノで指が転ぶ」について解説しました。
指が転ぶとは、音が部分的にすべって早くなってしまう状態のことです。
指が転ぶことを防ぐ方法として、5つの練習を紹介しました。
- 手のフォームを再確認する
- ゆっくりなテンポで弾く
- スタッカートやフォルテでで弾く
- 指くぐりは部分的に練習する
- 音の粒をそろえるには基礎練習をする
これらの練習は地味ですが、とても効果のある方法です。
「もっときれいな音で弾きたい」「ピアノを上達させたい」と思った方は、ぜひ日々の練習に取り入れてみてください。
あなたのピアノライフを応援しています!
コメント