「ピアノは子どもの頃から習わないと上達しない」という言葉を聞いたことがある人は多いかもしれません。
大人になってから「ピアノを始めたいな」と思ったにも関わらず、この言葉の印象が強く、「大人だから今さら練習しても、上達できないのかな」と、踏みとどまっている方もいるでしょう。
実は、大人になってからピアノを始めた方が良いことも、たくさんあります。
ここでは、大人になってからピアノを始めたいけれども迷っている方に
- 大人になってからピアノを始めるのが遅いと言われている理由
- 大人になってからピアノを始めることのメリット5つ
- ピアノを始めるにはどうしたらいい?
について、ご紹介していきます。
大人になってからピアノを始めるのが遅いと言われている理由

冒頭でもご紹介したように、「ピアノは子どもの頃から習わないと上達しない」という言葉を、多くの方が聞いたことがあると思います。
それは、「大人になると上達するのが遅い」と考えられているためです。
ここでは、その3つの理由について、ご紹介していきます。
基礎の習得に時間がかかる
一般的に、ピアノは6歳ぐらいから始めても高校生まで続けないと、思い通りにピアノが弾ける状態にならないと言われています。
このように、ピアノは基礎を習得するまでに多くの時間が必要です。思い通りのピアノが弾けるようになるまで、長い間、練習が必要になります。
大人になってからピアノを始めると、基礎が身につくまで時間がかかってしまうので、なかなか上達しないと言われてしまうのです。
また、音感やリズム感などの地盤がない状態で練習をスタートするのでピアノをスタートすることになるため、上達が遅いと考えられています。
練習時間が限られる
練習時間が限られてしまうのも、大人になってからピアノを始めても上達が遅いと言われている理由の一つです。
子どもや学生は、時間を自由に練習に充てられることができるのに対して、大人は、仕事や家事などがある中でピアノの練習をする時間を作らないといけません。
そうなると、1日に練習できる時間が限られてしまったり、練習できない日もあるでしょう。
ピアノは「1日練習しないと3日戻る」と言われているほど、毎日の練習が欠かせない楽器です。
このように、大人になると、練習時間が限られたり、毎日取れなかったりするので、ピアノの上達が遅いと考えられています。
モチベーションの維持が難しい
大人がピアノを始めるときに、モチベーションを維持しにくいと言われているのも、上達しにくいと考えられている理由の一つです。
子どもとは違い、大人になると「毎日〇時間練習しなさい」や「今日はどれだけ練習したの」と、声をかけてくれる人がいません。
また、ピアノ教室に通っていると、「発表会にでる」という大きな目標を立てて練習に励むこともできますが、こういった目標を立てずに自分のペースで練習したいという人もいるでしょう。
周囲からの声かけや、目標がなく、毎日一人で黙々とピアノを練習することに苦痛を感じたりして、モチベーションが保てなくなってしまったりすることも珍しくありません。
その結果、練習する回数が少なくなったりして、上達するのが遅くなってしまうのです。
大人になってからピアノを始めることのメリット5つ

大人になってからでも、正しい練習をすることで、上達することは可能です。
さらに、大人になってからピアノを始めることのメリットもたくさんありますので、ご紹介していきます。
大人の方が明確な目標を持った状態でピアノを始めやすい
ピアノを始めるときに、子どもと大人の大きな違いは、「明確な目標があるかどうか」ということなのではないでしょうか。
個人差はあると思いますが、幼少期にピアノを始める場合は親の希望で始めることも多いです。
そのため、明確な目標や弾きたい曲があってピアノを始めるという子どもは少ないと思います。
一方で、大人がピアノを始める場合は、
- 大好きなあの名曲を弾けるようになりたい
- とにかくピアノの音色に癒されたい
- 一芸を持ちたい
などといった、強い気持ちや何かしらの目標を持っていると思います。
「上手になりたい」「弾けるようになりたい」という意欲が大きい方が、上達も早くなります。
理解力があるので上達が早い
ピアノは、楽譜の読み方、リズムの取り方など、理解することや覚えることがたくさんあります。
楽譜を一瞬で読み取り、どの音かを判断して弾くことや、八分音符・6/8拍子といった理解は、子どもには難しいものです。
大人でも始めは難しいかもしれませんが、子どもよりも理解するのに時間がかからないというメリットがあります。
また、大人は曲の理解をすることも可能です。
曲の持つイメージや、情景を思い浮かべながら、感情を乗せて弾くことができます。
癒し効果がある
ピアノの音色はとにかく癒されますよね。聴くことはもちろん、自分が弾くピアノも癒し効果抜群なんです。
少し悩み事があるとき、疲れているとき、ピアノを弾いているとスーッと心が楽になって、やる気がでてくることがあります。
これは、ピアノを弾くときに分泌するドーパミンが関係しているのです。
ドーパミンとは、幸福感や意欲を感じさせるホルモンのことです。
なので、ピアノを弾くと、集中力がアップしたり、やる気が湧いてきて元気になるのです。
脳が活性化する
ピアノを弾くときは、楽譜を見て一瞬で音を捉えたり、弾きながらその先の楽譜を読むことが必要です。また、楽譜を覚えて弾くこともあります。
ピアノを弾くときは10本の指がそれぞれ素早く、複雑に違う動きをします。
これらの全てが脳に刺激をもたらし、それによって脳が活性化します。
脳が活性化すると、全身の血流が良くなり、心拍数・呼吸数・血圧が安定します。
なので、生活習慣病の予防にも繋がります。
記憶力が向上する
じつは、ピアノは認知症の予防になることをご存知でしょうか。
楽譜を覚えることで、「海馬」という脳の中で記憶を司る部分が活性化し、記憶力が向上します。
海馬の大きさは、ピアノを弾く人の方が弾かない人に比べて大きいことが分かっています。
「最近物忘れが酷くて」という方は、脳の老化を防ぐためにピアノを弾いてみてはいかがでしょうか。
ピアノを始めるにはどうしたらいい?

実際に「ピアノを始めよう」と思った時、まず最初に迷うのが、「ピアノ教室に通った方がいいのか?それとも、独学でもできるのか?」ということだと思います。
- 初心者が独学でピアノを弾けるようになるの?
- 初心者の大人でも通えるピアノ教室はあるの?
といった、不安もあると思います。
ここでは、こういった不安を抱えている方に、独学とピアノ教室の特徴をまとめましたので、ピアノを始める際の参考にしていただけたらと思います。
両方の特徴を知り、皆さんが自分に合っていると思う方を選択されて、ピアノが弾けるようになるきっかけになると幸いです。
独学でピアノを始めるメリット・デメリット
独学でピアノを始めるメリット・デメリットを解説します。
独学で始めるメリット
自分が好きな曲だけを弾くことができる
一番のメリットは、自分が好きな曲だけを弾くことができるということです。
ピアノ教室の場合は、上達に効率がよい曲をひくことが多いのですが、独学の場合は自分で全ての曲を選ぶので、好きな曲だけを弾くことができます。
何が目的でピアノを弾いているかによりますが、自分が好きな曲をピアノで弾きたくて始めた人にはとても大きなメリットです。
また、自分が弾きたい曲で練習しているので、長続きにも繋がります。
- 自分のペースで弾くことができる
この曲を〇日まで、という指定がないので、自分のペースで進めていくことができるのもメリットの一つです。
ピアノ教室で期限を守れなかったとしても怒られることはないですが、期限にストレスを感じる人や、忙しくて頑張りすぎてしまう人には独学がおすすめだと思います。
自分のペースで弾けるというのはメリットですが、さぼりがちな人は自然に辞めてしまう可能性があるので注意が必要です。
独学で始めるデメリット
- 上達の効率が悪い
ピアノの曲には様々な特徴があります。難しい和音が多い曲、跳躍(例えばドを弾いて次にミを弾き、レを跳ばす)が多い曲など様々です。
これらの曲を満遍なく弾いて色々な曲を弾けるようになるのが理想ですが、好きな曲だけを弾く独学は偏りが出てしまうことがあります。
この場合、あまり弾いたことがない曲に出会った時ときは、弾くのに苦労することもあります。
また、自分のペースで弾くことができるのが独学の魅力です。
しかし、大抵の場合、ピアノ教室に通っている人よりも練習時間が短くなるでしょう。そのため、上達には時間がかかってしまうことが多いです。
- 知らなかったり、気をつけないと我流になってしまう
独学で一番怖いのが、最初の内から全て我流で練習してしまうことです。
我流で練習してしまうと、自分の演奏の何が違っているのかに気づくことができません。
上達してから出てくる個性とは違い、最初の基礎基本を身に付ける段階での我流は間違った弾き方の癖がついてしまいやすいです。
どうしようもないことなのですが、ピアノを習得する際には、それぞれの癖が出やすいものです。この「癖」というのは、必ずしも悪いものではなく、演奏に悪影響を与えない程度であれば、「個性」と言うこともできるでしょう。
ですが、この「癖」を矯正する機会がないまま、独学でピアノの練習を進めていってしまうと、あとから矯正するのが難しくなってしまいます。
また、こうした「癖」をそのままにしておくと、今は大丈夫でも、これから先、必ずどこかで躓いてしまいます。
教材などを購入して練習している人は問題ないのですが、ピアノを初めて弾く人がいきなり楽譜を読んで弾いてしまう場合は注意が必要です。
ピアノ教室で習うことのメリット・デメリット
ここではピアノ教室の中でも個人レッスンの場合について紹介していきます。
ピアノ教室で習うことのメリット
- 基礎基本がしっかり学べる
ピアノを弾くためには、正しい姿勢と打鍵の方法、手の動かし方、肩や腕などの身体の使い方を学ぶ必要があります。
ピアニストはみんな無造作に椅子に座っているように見えますが、じつは、椅子の高さや位置は体格により差があり、毎回正しくセッティングしています。
正しい姿勢はピアノ演奏の基本のキなのですが、初心者が独学で正しく身に付けることはほぼ不可能です。なぜなら、自分の姿は自分では見えないからです。
- 上達の効率が非常に高い
ピアノ教室で学ぶことで、独学よりも早く上達します。
ピアノ教室の先生はピアノの専門家なので、練習のコツや上達方法などを知っています。
また、一対一でのピアノレッスンでは、生徒の年齢や手の大きさ、希望や練習時間などを考慮して、一人ひとりに合った練習メニューを組んでもらうこともできます。
じつは、大人の初心者にとって「ピアノ教室に入って習う」ことはピアノ上達の一番の近道なのです。
- 質問や相談ができる
ピアノは演奏の難しい楽器なので、学ぶ過程でうまく弾けない個所や知らないこと、分からないことがたくさん出てきます。
楽譜の読み方ひとつとっても、新しく出てきた記号の意味や演奏の仕方などを、自分で一つひとつ調べるのは大変です。
しかし、ピアノ教室では、先生に分からないことや難しい箇所の弾き方のコツなどを質問することで、すぐに解決することができます。
その結果、調べる時間になるはずだった時間を、練習に充てることもできるのです。
ピアノ教室で習うことのデメリット
上記の様に、ピアノ教室に通うことは大人になってからピアノを始める方にとって、ピアノが上達する一番の早道ですが、デメリットもあります。
- お金がかかる
ピアノ教室に通えば、当然レッスン料または、月謝というお金がかかります。
ピアノ教室の月謝は、地域によって相場が違いますが、毎月2~4回で、7,000円~10,000円くらいです。
ただ、ピアノ教室に通うには、毎月の月謝以外にも、お金がかかります。
月謝以外にかかかる費用の目安として
- 入会金(5,000円~10,000円)
- 教材費(実費)
- 発表会がある場合は、参加費(10,000円~20,000円)
- 教室までの交通費
などがあります。
月謝以外にかかる費用については、そこの教室に確認するのがよいでしょう。
- ピアノ教室に通うための時間がかかる
社会人である大人がピアノのレッスンを続けるのが大変な理由の一つとして、レッスンにかける時間をつくることにあります。
ピアノのレッスンを受けるためには、毎週または、毎月数回決まった時間に教室に通うことになるので、一定の時間がどうしても必要です。
ピアノ教室がすぐ近くにある人ばかりではないと思いますので、忙しい社会人にとっては、それなりの負担になります。
- 自分に合った指導が受けられるとは限らない
ピアノは、一対一の習い事なので、生徒と先生の相性の良し悪しは上達の重要な要素になります。
たまたまご縁あって師事した先生が、あなたの希望通りのレッスンをして下さるかは分かりません。
「ピアノの先生と合わない」という悩みは、常にピアノ教室で学ぶ生徒さんたちについてまわります。
ピアノ教室に通いながらも、先生に対して違和感を持つ人が一定数存在するというのは、留意すべき点かもしれません。
独学とピアノ教室のどっちを選べばいい?
ピアノ教室をおすすめしたい人
ピアノ教室でピアノを習うことをおすすめしたいのは、下記のタイプの方です。
- 初めてピアノに触れる人
- クラシックピアノが弾きたい人
- 楽譜が読めるようになりたい人
- 早く上達したい人
- 基礎基本をしっかりと学びたい人
初めてピアノの練習をするという方にとっては、やはりピアノ教室に入って先生から学ぶのがおすすめです。
教室では、椅子の位置から、高さ、ピアノとの距離から教えてもらうことができます。
もちろん正しいタッチや身体の使い方も教えてもらうことができます。
独学をおすすめしたい人
ピアノ教室などにあえて入会せずに、独学でピアノを学ぶのをおすすめしたいのは、下記のタイプの方です。
- 多少なりとも経験のある人
- アニソンなどポピュラー曲を弾きたい人
- 耳コピで好きな曲を弾けるようになりたい人
子どもの頃に少しだけピアノを習っていたけれど、十数年のブランクがあってもうすっかり忘れてしまっている。そんな方は独学でもなんとかなります。
少しでも経験があれば、全くの初心者とは違い、座り方や姿勢などの基本的なことは、身体が覚えているものだからです。
ピアノを弾いているうちに、以前学んだことが少しずつ思い出されてくることでしょう。
まとめ

ピアノを始めるのに大人になってからでも遅くはありません。むしろ大人になってから始めた方が良いこともたくさんあることを知っていただけたと思います。
一番大切なのは「ピアノが弾きたい」という気持ちです。
この気持ちさえあれば、練習を始める年齢は関係ありません。
ただ、気をつけておきたいことは、初めに基礎基本をしっかりと身に付けておいた方が、のちのち、色んな曲を弾けるようになるということですね。
僕も、幼少期から中学校までピアノを習っていました。しかし、弾きたい曲を弾かせてもらえず、モチベーションが下がっていた時期があり、練習が大嫌いになってしまっていた時期もありました。
当時、何も分からずに練習をしていましたが、身体が基礎基本を覚えていたようで、子どもから曲を弾いてもらいたいと言われた時に、十数年ぶりですがピアノを弾くことができました。
教室に通うのは大変かもしれませんが、
- 基礎基本をしっかりと身に付けることができる
- 先生にコツを教えてもらったり、相談することができる
上記のことを、プロの方に直接教えてもらえるので、練習も楽しくなりますし、上達も早いです。
独学にしようか教室にしようか迷われている方は、教室では、体験教室などもありますので、体験教室に参加されてみて決められるのもよいでしょう。
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